ザ・クラッシュ『白い暴動』

白い暴動

白い暴動

例えば、ラストの14トラック目『ガレージランド』のサビでチェンバロだかハープシコードだかの音色が響く。
それまでほぼギター、ベース、ドラムのみのシンプルなサウンドだったために、突然鳴り響くそのリリカルな音色に溜息が出るほど安心してしまう。
どうして全編にわたってそういうアレンジのバラエティ感を出さないのか。
初期衝動が本質、なのは理解できる。
イデオロギーとそれにともなうエモーションが大切なのであって、音楽的な装飾が時として邪魔になってしまうということも十分理解できる。
でも、それでもね。
やっぱりこのシンプル過ぎるというほどに丸裸のバンド・サウンドには、僕の感情は少しも揺さぶれない。
ロンドン・パンクを象徴するこのアルバムは、申し訳ないくらいに僕の耳にも聴きやすくできている。
聴きやすいが故に余計、名盤と呼ばれているこのアルバムの良さを理解できないことに劣等感を感じてしまうのだ。